不登校生徒への一歩、訪問支援のエピソードの3-尾添校長の明日は晴れ⑤
ある女の子(中2のA子さん)のこと)
お母さんが泣きながら電話をしてこられました。
「私たち(お父さんも)の言うことは何も聞かず、部屋から出てこないんです。藁をもすがる気持ちでお願いしたいんです。」
わかりました、まずはなんとかお会いできるようやってみますね。
とはいうものの、女の子だし、やっぱりそこは年の近いお姉さん的存在の女子大学生に訪問支援は対応してもらう方ががいいだろう。
そう考えて、近くの大学に通っている将来高校の先生を目指しているB子さんと初めての訪問に向かいました。
やはり、A子さんは部屋の中で息を潜めているようです。
私はいつものパターンで、お母さんに、「ではちょっとだけ訪問の挨拶をして、すぐにA子さんの部屋からはおいとましますね。」と言い、大学生のB子さんと部屋をノックしました。
「A子さん、ほんの少しだけお話ししてもいいかな?」
すると、まさかの「どうぞ。」という返事が返ってきました。
私たち二人で部屋に入ると、部屋中にアニメキャラのポスターが張り巡らされ、部屋の中にはタバコの煙が充満していました。
「いきなり来て、ホンマにごめんなさい。なのに、部屋に入れてくれてホンマにありがとう! あ、ホンマにばっかりアホみたいに言ってるな、わたし。ホンマにアホやな。」
と言ったら、少し笑ってくれたように覚えています。
「今日一緒に来たBさんな、やっぱりアニメ大好きやねん。今度さ、3人でカラオケ行こうよ。喉が枯れ果てるまで歌い倒しましょう!」
A子さんは小さく頷いてくれました。
それから1週間後、まさかの本当に3人でカラオケに行って3時間歌いまくりました。
その時、A子さんが注文して届けられた料理を私やB子さんに小分けにしてくれたり、ドリンクを配ってくれたりしたのをみて、彼女の中で、何かが心の中で詰まっていたのだろうな。
と強く思ったのです。
BUMP OF CHICKENの「プレゼント」の歌詞
壁だけでいいところに
わざわざ扉作ったんだね
嫌いだ 全部好きなのに
という歌詞そのものの、
A子さんの心模様をそこに見たように思いました。
そこから、再び勉強や進路を考えることを再開し、彼女は高卒認定試験を受ける道筋を選び、(中3から勉強を開始して)高1の8月の試験で全て合格し、そこからは私のフリースクールで大学受験勉強に励みました。
指導するのは、もちろん訪問支援の際、一緒に歩み始めたB子さんです。
A子さんは、B子さんに大きな影響を受けて、今は教員養成課程の大学生です。
たぶん、A子さんは素敵な先生になると思います。
この記事を書いた人
尾添 先生
J-Web School / J-Schoolの高卒認定試験専門講師。約10年間、不登校支援カウンセラーとして、学校に行けず悩んでいる子供たちや、その保護者の話を聞き、未来への道をひらくご支援をさせていただいています。