不登校生徒への一歩、訪問支援のエピソードの4-尾添校長の明日は晴れ⑥
お問い合わせをいただき、昼日中の午後2時にご自宅を訪問したら、
中1の彼は真っ暗な部屋で息を殺して2段ベッドの上に横たわっていました。
「入らないで」とは言われなかったから入ったけど、こちらの声掛けに何も言葉を発してくれません。
彼の部屋を出てリビングでお母さんと話しました。
「あの子が小6の時に消防士のお父さんが火事の現場で亡くなったんです。それから心を閉ざすようになって、、」
「彼が好きなのは何ですか?」
「吉本新喜劇や、お笑いが好きなのに、今は全然見ないんです。」
2回目に訪問した時、携帯で吉本新喜劇のすっちーと吉田豊の「乳首ドリル」のシーンをボリュームを上げてかけました。
2段ベッドの上からむくっと顔をあげて笑顔をみせてくれました。
「勉強しろって言いにきたんじゃないんですか?」
「一緒に楽しいことをやって行こ。」
それから一緒に駅前のTSUTAYAまで毎週吉本新喜劇のDVDを借りに行く日々が始まりました。
彼の髪はずっと学校に行ってないのと、ある理由で肩まで伸びていました。
「何で散髪行かへんの?」
「散髪屋は、お父さんとずっと行ってもらってた。だから、1人ではよう行かれへん。」
「そっか。ほんならおっちゃんと行こ。一緒に行ったる。」
「絶対嫌。(笑)」
訪問を始めて3か月が経ち、ついに一緒に散髪屋さんに行きました。
散髪屋のご主人が、
「○○くん、久しぶりやなぁ、えらい髪伸びとるがな。どないする?」
「短くしてください。バリカン入れていいですよ。」
事情を全部知っている散髪屋のご主人は少し涙ぐんでいるように見えます。
彼の後ろには、お父さんでも何でもない、でも彼の事を心から大好きな私がスポーツ新聞を読みながら見守っていました。
中2になって彼は学校に戻っていきました。
今はもう大学生です。
この記事を書いた人
尾添 先生
J-Web School / J-Schoolの高卒認定試験専門講師。約10年間、不登校支援カウンセラーとして、学校に行けず悩んでいる子供たちや、その保護者の話を聞き、未来への道をひらくご支援をさせていただいています。